キャスト&スタッフ

Castキャスト

DIRECTOR’S STATEMENT 監督からのメッセージ

私が思春期に観て来たニッポンの映画たちは、戦後の「高度経済成長」と併走してきた大手撮影所で製作された作品ばかりだった。出演者たちは、主演のスターのみならず皆、厳選された俳優(役者)たちであり、私たち観客は、彼らをスクリーン上の「別世界」の存在として唯々、眩しく見つめていた。

映画館の周囲には未だ農地が点在し、サラリーマン家庭も普通に野良仕事をしていた。未だ未だ農業国ニッポンだったのだ。

俳優や役者は、中世以降「芸能の民」として「晴れと褻」の「晴れ」の催事を担い続けて来た。勿論、「晴れと褻」は表裏一体であり、「芸能の民」の存在そのものは「褻」と言って良かった。

映画も戦後のニッポン人にとって日常の「褻」からひと時、解放させてくれる「晴れ」の為の重要な装置だった。

しかし、TVの登場による映画館の減少とともに農地も野良仕事をする姿も見ることがなくなり、呼応するかの様に「晴れと褻」の区別が明確ではなくなっていった。何故か? 賤業とも言われた「芸能の民」が、TVにより一夜にしてセレブに成る可能性が拡がり、それを見て取った普通の若者たちの中から「芸能の民」を目指す者が急増したからだ。平凡なサラリーマン家庭に育ちながら映画監督を目指した私もその一人かも知れない。農業社会を切り棄て近代国家に生まれ変わったニッポン人の意識が私を含めて狂い始めた瞬間とも言える。

20世紀終わりのバブル景気が拍車をかけた。普通のニッポン人たちが「晴れ」を自分たちで司るようになった。「一億総『芸能の民』化現象」。そして私も映画監督に成った。最早、多くのニッポン人は昔ながらの「芸能の民」を必要としなくなってしまったのだ。

そんな我々、ニッポン人の意識の変化に戸惑いと強い興味を覚えた。

インターネットの出現でTVの社会的地位と役割が脅かされ始めると映画を取り囲む状況も更に、変わり始めた。当然、本来の俳優や役者、「芸能の民」が背負っているものも大きく変化してしていった。

しかし、人間が生きている以上「褻」がなくなることは有り得ないし、「褻」に含まれる「闇」を意識せずして真の「芸能の民」足り得ることもない。

『貌斬りKAOKIRI』とは、役者が「闇」を抱えた他人を演じ切る真の「芸能の民」としての「貌を斬るパッション」であり、「貌を斬らせる矜持」である。

今、「褻」=「闇」を担う真の「芸能の民」になることを覚悟した数少ない現代ニッポン人たちの孤独な精神の闘いが、小さな劇場を舞台に新たにウネリ始める。

細野辰興

Staffスタッフ

  • 細野辰興:製作・プロデューサー・脚本・監督
    Tatsuoki HOSONO: Investor, Producer, Screenplay and Director

    1952年生まれ。獨協大学外国語学 部卒業後、横浜放送映画専門学院(現・日本映画大学)に学ぶ。今村プロダクションを振りだしにディレクターズ・カンパニーで助監督時代を過ごし、今村昌 平、長谷川和彦、 相米慎二、根岸吉太郎の4監督に師事する。1991年『激走トラッカー伝説』で監督デビュー。1996年の『シャブ極道』は、90年代日本映画ベストワン と絶賛され未だに話題を提供し続ける傑作。 以降、ジャンルに捉われず社会性のある骨太なエンターテイメント作品を発表し続ける。2011年より創作ユニット[スタニスラフスキー探偵団]も手がける。2016年は、メディアを越境するドラマ『怪盗アトム小僧』も発表。2011年より創作ユニット[スタニスラフスキー探偵団]も手がける。

    [FILMOGRAPHY] 映画監督 『激走トラッカー伝説』(1991年)、『大阪極道戦争 しのいだれ(1994年)』、『犯人に願いを』(1995年)、『シャブ極道』 (1996年)、『狼の眼』(1997年)、『売春暴力団』(1997年)、『竜二Forever』(2002年)、『著作者人格権』(2003年、短編)、 『燃ゆるとき THE EXELLENT COMPANY』(2006年), 『ちちり~盗~』(2010年、短編)、『私の叔父さん』(2012年) 。TVドラマ演出 『ドラマダス 『世にも不幸な物語』(1995年)、『ゴーストの恋』(2015年 TV)、『怪盗アトム小僧』(2016年)。舞台演出 『スタニスラフスキー探偵団』(2010年)、『マルクス愚連隊、原作者Jr.拉致事件なう。』(2011年)。

  • 日下部圭子:製作・プロデューサーKeiko KUSAKABE:investor, producer

    東京都出身。1986年『ドレミファ娘の血は騒ぐ』(監督 黒沢清)媒体担当アルバイトで映画界入り。以降パブリシストとしてワーナー・ブラザース映画作品を手がけつつ、『追悼のざわめき』(1988年中野武蔵野ホール公開時/監督 松井良彦)宣伝などインディーズ映画の大ヒット作を生みだす。1990年よりイタリアの鬼才『青春のくずや~おはらい』から『赤いシュート』までナンニ・モレッティ監督5作品を日本配給、『バレット・バレエ』(1998年)以降『KOTOKO』(2013年)まで塚本晋也監督・海獣シアター製作作品など配給。個性的な監督作品を、企画(ときに製作出資、買付)から劇場公開、テレビ・DVD発売にいたる配給全般、宣伝、海外販売等あらゆる側面から世に送り出す。本作はディレカン時代からの付き合いでもある細野との、『狼の眼』宣伝以来のコラボ。ベネチア国際映画祭コントロ・コレンテ(現・オリゾンティ)部門審査員(2005年)、カフォスカリ短編映画祭インターコンペ部門審査員(2013年)の他、同映画祭特別上映作品のアドバイザーをつとめる。国立ベネチア大学(Università Ca' Foscari Venezia)2017年度のマスタークラスFilm Makingにも協力(代表取締役をつとめるマコトヤとのパートナーシップのコーディネート、配給についての講義など)。

    ほか主なプロデューサー作品:『三年身籠る』(2005年/唯野未歩子)、『ノン子36歳(家事手伝い)』(2008年/監督 熊切和嘉)、『ラブドール~抱きしめたい』(2009年/監督 村上賢司)、『ユリ子のアロマ』(2010年/監督 吉田浩太)ほか、配給プロデューサー:『六月の蛇』『ヴィタール』『KOTOKO』、共同プロデューサー『ぼくらの亡命』(2016年/監督 内田伸輝)ほか。

  • 杉山蔵人:製作・プロデューサーTadahito SUGIYAMA:investor, producer

    千葉県出身。幼い頃から生粋の映画好きとして、日本映画について圧倒的な知識量をもつ映画ファンとして、池袋新文芸座やシネマヴェーラの特集上映の番組編成に参画、近年はシネマノヴェチェントのトークゲストへの声かけ、神保町シアターのトークショーで司会をつとめるほか、梶芽衣子DVD BOXアメリカ発売協力も。また忙しい合間を縫って、東映東京の美術監督の桑名忠之さんのインタビュー収録、山根貞男氏らのインタビュー収録で聞き手をつとめ、中島貞夫監督の映画人生50年を祝う会出席のために京都へ出かける。細野への映画化進言は舞台脚本を読んですぐさま、舞台の千秋楽とともに関係書籍『千本組始末記: アナキストやくざ 笹井末三郎の映画渡世』(柏木隆法著)を読み終えた。本作では使用楽曲交渉、クラウドファンディング担当。

  • 道川昭如:撮影Akiyuki Michikawa: Cinematographer

    1976年、茨城県出身。日本映画学校(現・日本映画大学)撮影・照明コース卒業。短編オムニバス『ちちり』(2008年)で映画撮影デビューと同時に細野と出会い本作にも参加、またそこで出会った監督たちとともに『青二才』などの青春Hシリーズ。同時期に“父”をテーマにしたオムニバス映画『Father』。映画に収まらずテレビでも活動。

    ほか主な撮影作品:『太陽からプランチャ』(2014年)ほか窪田将治監督作品、『ゆめはるか』(2014年)ほか五藤利弘監督作品、『キリング・カリキュラム~人狼処刑ゲーム 序章~』(2015年/監督 古厩智之)、公開待機作『普通じゃない職業』(監督 須上和泰)など。

  • 伊藤侑貴:舞台照明Yuki ITO: Stage lighting

    1989年生まれ。日本大学芸術学部演劇学科照明コース卒業。現在はフリーランスの照明家として劇場やライブハウス、展示空間等で活動中。

    主な担当作品:照明プラン・オペ:新世界PresentsSpecial Live Performance vol.2 『d/a/d(デーアーデー)』( 2015年/構成・演出・音楽・出演 山川冬樹、小田朋美、ハラサオリ)、ダンス作品サブテレニアン10周年記念月間参加 fundada-3「サイト」(2016年/作·演出 伊藤麻希)、照明オペ:青年団第75回公演 「ニッポン・サポート・センター」 (2016年/作・演出 平田オリザ)など。

  • 荒井保:照明Tamotsu ARAI: Lighting

    1968年、埼玉県出身。VPなどの制作会社を経て映像業界入。ピンク四天王のひとりサトウトシキ監督『花つみ』録音で2011年映画初参加、2013年『Father』で照明デビュー。翌年は映画6作品に録音と照明とで参加。若い監督とのコラボが多く、本作はデビュー作以来のベテラン監督の現場となった。

    ほか主な映画照明:『KIDS=ZERO キッズ=ゼロ』(2014年/監督 須上和泰)、『花蓮 かれん』(2014年/監督:五藤利弘)、『キリング・カリキュラム 人狼処刑ゲーム 序章』(2015年/監督:古まい智之)、公開待機作『普通じゃない職業』(監督:須上和泰)など。

  • 若林大介:録音・編集Daisuke Wakabayashi: Sound recording and Film editor

    1978年、東京都出身。日本映画学校(現・日本映画大学)卒業後、フリー助手となる。記録映画などの録音・整音を多く務める。録音のみならず、デジタル及びポスプロ技術に精通し、ポストプロダクションワークフローの構築なども行う。本作では舞台音響・現場録音・編集・整音・カラコレを担当。現・日本映画大学専任講師。

    主な担当作品:『いのちの作法』(2008年)、『葦牙ーあしかびー』(2009年)など小池征人監督作品の録音、『希望のシグナル 自殺防止最前線からの提言』(2012年/監督 都鳥伸也)整音、『父をめぐる旅 異才の日本画家・中村正義』(2013年/監督 武重邦夫、近藤正典)録音、『物置のピアノ』(2014年/監督 似内千晶)録音など。

  • 金勝浩一:美術Koichi Kanakatsu: Art director

    1963年、東京出身。横浜映画放送学園(現・日本映画大学)卒業。映画『トカレフ』(1994年/監督 阪本順治)で美術監督デビュー。テレビ、広告なども手掛ける。1999年、美術の仲間と映画館「シネマ下北沢」を施工、設営、開館営業。

    主な映画美術作品:『赤目四十八瀧心中未遂』(2002年/監督 荒戸源次郎)、『ピンポン』(2002年/監督 曽利文彦)、『火火』映像技術賞奨励賞(2004年/監督 高橋伴明)、『一枚のハガキ』第66回毎日映画コンクール美術賞(2011年/監督 新藤兼人)、『神様のカルテ』(2012年/監督 深川栄洋)、『杉原千畝 スギハラチウネ』(2015年/監督 チェリン・グラック)、『ヒロイン失格』(2015年/監督 英勉)など。

  • 照井旅詩:舞台美術Ryouta TERUI: Stage design
  • 籔中博章:音楽Hiroaki YABUNAKA: Music

    1965年、兵庫県出身。編集プロダクション在籍時に中村幻児映像塾の助監督の紹介で出会い、1991年、細野の劇場本編デビュー作『激走トラッカー伝説』で映画音楽デビュー。映像・編集・効果も手がけ、『小松左京幻想ファクトリー(CS放送)』、多くの企業VP、アイドルDVD制作も。またライターとして格闘技・サブカルチャー系でオフィシャルブック・単行本等も出している。『シャブ極道』『竜二Forever』『私の叔父さん』など、ほとんどの細野作品に音楽参加。最近はアニメの劇伴制作にも挑戦中。

  • 有馬達之介:助監督Tatsunosuke ARIMA: Chief assistant director
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